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Author: kasa
• 木曜日, 2 月 21st, 2013

大町市「定住促進ビジョン」への懸念

NPO地域づくり工房 傘木宏夫

 大町市の定住促進ビジョン(H24.11.25策定)は、平成28(2016)年の人口目標を3万人とする定住促進策を打ち出し、来年度予算案にも反映している。
 意欲的な政策である。しかし、そのことの意味することは複雑である。
 国の人口問題研究所が発表している将来推計人口(表1)では、平成27年には28,647人に減り、平成47年には21,073人と推計している。しかも、平成22年の実数は、推計値より低い結果となっている。ちなみに、同ビジョンの資料編には同研究所の推計値を平成37年までしか掲載していない。
 年齢5歳階級別人口(表2)でみると、0~4歳児は平成20年1,105人が平成24年872人と大幅に減少している。
 このように、急激な人口減が見込まれる現実があるのに、目標を高く掲げることは「意気込み」としてはいい。しかし、それを行政計画や予算の根拠することには疑問を抱かざるをえない。
 例えば、人口が減らない前提で、現存の小中学校の体制を維持するのかという問題がある。平成24年の出生数(表3)は170人で、30人学級としても6クラス分である。実際には小学校6校と中学校4校がある。しばしば言われる「小さいなりの良さがある」というのは事実であろうが、集団生活やクラス対抗やクラブ活動ができない規模の学校が子どもの大多数にとって幸せな状態といえるであろうか。少人数制を願う学童への対応はあってもいいが、それを全市的に普遍化していいとは思えない。私は小学校1~2校に集約すべきだと考えるが、こうした考え方は大反発を招くであろう。
 人口が減少することを前提に、適正規模な行政に軟着陸させる努力が必要である。それには、かなりの激論とそれを乗り切る覚悟が必要である。
 人口減少は決して灰色の世界ではない。少なくなる人口にあわせて福祉や教育のサービスの集約化と質的向上を図る方向で舵を切るべきである。観光などの交流人口を増やすことに力を入れれば、人口は少ない方が一人当たりの収入は増える。地域内の自然資源(農産物やエネルギー等)を有効に活用すれば、中国等の台頭で心配される食糧・エネルギーの不安要因から自立することができる。北海道東川町のように、適正規模を7千人に設定し、旭川市からの流入人口を抑制する政策を進めている自治体もある。
 目標を高く掲げることは否定しないが、それが過剰投資を招いたり、将来の地域づくりに向けた体質改善を遅らせることになったりするのであれば、「定住促進ビジョン」はむしろ害悪である。
                                                (2013年2月20日)

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One Response

  1. [...]  3月27日、国の社会保障・人口問題研究所が、2010年国勢調査の結果を基にした将来推計人口を発表しました。大町市についての推計値をみると、前回(2008年)に比べて、さらに厳しい人口減を見込んでいることがわかります。  先月(2/20)、私は「大町市『定住促進ビジョン』への懸念」という小論を本ブログに掲載し、このビジョンの問題点をいくつか指摘しました。   ・2010年国勢調査結果は、2008年推計値を大幅に下回っており、将来人口については厳しい見通しが必要。   ・同研究所の推計を部分的に紹介して深刻な見通しを覆い隠している。   ・2016年の人口目標3万人という計画は過剰な投資を招く可能性がある。   ・将来の地域づくりに向けた体質改善を遅らせることになる。  新しい推計結果はこうした私の見方を裏付けるものとなりました。さらに、この推計結果もまた前回同様に楽観的なものと考えるべきで、定住促進ビジョンが目標年度とする2016年頃には2万5千人を割り込むことも想定されます。  人口3万人を維持するための行政投資を考えるよりも、2万5千人の規模でも満足度の高い行政水準を考えるべきです。その結果として、そのような町に住みたいと人が流入してくることを歓迎できるようにしたいものです。  今、大町市では都市計画マスタープランを検討していますが、松本糸魚川地域高規格道路の線引きを中心に据えているようです。約20年前、私が開発系シンクタンクに勤務していた時代の手法です。計画手法もこの10年で大きく変化しています。  人口減と少子高齢化にあわせて、空き家や耕作放棄地が今後どのように増えて行くのか見据えながら、コンパクトな都市構造に再編するために、社会インフラ(病院や学校など)をどのように集約・配置し、土地利用を誘導するのか、時間をかけた調査研究と合意形成が必要です。発想を変えないと地域の空洞化を進めるだけです。                                                 (2013年4月1日) 将来推計人口の新旧比較 « 信州 金熊温泉「明日香荘」 You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site. Leave a Reply [...]

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