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Author: kasa
• 土曜日, 2 月 27th, 2016

代表の傘木です。ちょっと小難しそうな話をアップします。

誇大宣伝「国際芸術祭の経済波及効果」 傘木宏夫 PDF版

 大町市が「北アルプス国際芸術祭 信濃大町 食とアートの廻廊」を計画するにあたり、模倣事例である2013年の「瀬戸内国際芸術祭」の主催者発表資料より、「総来場者107万人」「経済波及効果約132億円」といったデータを引用し、その経済波及効果の大きさを説明している。しかし、これらの資料は多分に誇大宣伝である。

 瀬戸内国際芸術祭実行委員会「瀬戸内国際芸術祭2013総括報告書」(20131213日)の13頁に示された表によると、107万人は14会場の合計数である。最多は直島の26万人、次に小豆島の19万人で、最少は大島の4千人である。

 その注釈には、芸術祭のために来た人を「計測することは困難」であるとして、集落に設置した複数の基準施設の来場者の合計を来場者としたと説明している。たとえば、島の出入り口である港に作品を設置してある場合、島に来た人は全て来場者にカウントされることになろう。そのため、日本政策投資銀行・瀬戸内国際芸術祭実行委員会「「瀬戸内国際芸術祭2013」開催に伴う経済波及効果」(2013129日)は試算の前提を30万人にしている。

 一方、香川県「平成26年香川県観光客動態調査報告」(20157月)から小豆島エリアの観光客入込数を見ると約100万人余がコンスタントに来ている。これを、芸術祭の開催年の前後の年と比較すると()、その差は約7万人で、これが芸術祭による寄与であると推測できる。翌2014年は全県では観光入込客は大幅に増えているのに対して、小豆島エリアは減少していることについて、同報告は「国際芸術祭の反動」と分析している。

表:小豆島エリアへの観光客入込数の推移(千人)

 

小豆島エリア

県内主要観光地合計

人数

2013年比

人数

2013年比

2012

1,059

67

4,723

19

2013(開催年)

1,126

0

4,704

0

2014

1,053

73

5,033

329

 長野県「平成26年長野県観光地利用統計」(20157月)によると、黒四ダム50周年であった2013年の黒四ダムの観光客入込数は99万人で、翌2014年は92万人(-7万人)に落ち込んでいる。瀬戸内国際芸術祭が地域に及ぼした経済波及効果は、大町市でいえば黒四ダム50周年の状況をイメージするとわかりやすいかもしれない。

 7万人の観光客がもたらす経済効果は少なくない。しかし、107万人や30万人といった数字で誇張することは実態とあまりにもかけはなれている。

なお、「北アルプス国際芸術祭 信濃大町 食とアートの廻廊 企画概要(案)」(2016225日)は、十日町市「大地の芸術祭開催がもたらす波及効果」を引用して、作家が支出する材料費/工事費/滞在費等の地元に還元されると説明している。これは当たり前のことである。問題にすべきは、同じ資金を投入するのであれば、地域内に直接投資できる事業(例えば、生活道路の維持・補修、住宅リフォーム助成等)に使った方が格段に地元への波及効果が高いのに、なぜ「アートなのか」なぜ「東京の業者に丸投げなのか」ということである。

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One Response

  1. 1
    straight reasoning 
    木曜日, 3. 3 月 2016

    現代アートの芸術家を30人定住させると、観光客が増えて定住人口が増え、人口が増えるという「魔法」のロジックは興味深いです。今時そんな魔法使いが居るわけがないです。
    経済弱者、社会的弱者の予算を削ってまでこの事業に全力で傾注する行政の姿勢は理解できません。また市議会でも1人の議員を除いて全員がこの問題について質問したという異常な事態を一切報道しない地方紙もおかしいです。
    大町市民は今回の議会での賛否の結果に注視すべきです。これは市長と市議会議員を評価する上での試金石。もし市民無視で可決されるのであれば、私は次期選挙では投票しない、新聞購読を止めるという行動で抗議します。

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